良性発作性頭位めまい(BPPV)

めまいの中で一番多い疾患です。

症状は頭を動かすとめまいがするというものです。
朝起き上がる時に周囲がまわるめまいが2から3分ほど続く、というエピソードが典型的なものです。
寝返りをうつとき、顔を洗う時、急に振り向くとき、上を見上げるときなどにめまいがおこりますが、大切なことはどのような頭の位置、または動作のときにめまいがおこりやすいかを知ることが診断のポイントになります。
従って受診のさいには、どんな時にどのようめまいが、どれだけ続くかを説明すると診断の確実さがアップします。

最近その病態が明らかになってきました。
これは内耳の病気です。
内耳は蝸牛、前庭、迷路から構成されています。
蝸牛はマイク、前庭は加速度センサー、迷路は手ぶれ(頭ぶれ)防止装置のような働きがあります。

この3つ全部が障害される病気がメニエール病、後の2つが障害されるとここにいう良性発作性頭位めまいです。
車の加速度感、エレベーターに乗ったときの昇降感、いずれも前庭の感覚で、前庭は耳石器ともいわれ、その由来は古く魚にも耳石は備わっています。

感覚細胞の上に砂粒があり、頭の動きにより砂粒が感覚細胞の上を前後左右に動くことによって、加速度を感じています。
なんらかの原因で砂粒がはがれ内耳の中をさまようことから病気が始まります。

簡単な例として頭部を叩いて砂粒がはがれた場合を想像するといいでしょう。
最近のカメラには手ぶれ防止機構がついたものがあります。
カメラが動いても画面は真ん中に保持する装置です。
迷路はこれと同じ働きをします。
むしろカメラがこちらを真似たというほうがあっているかもしれません。
この装置のおかげで、頭を動かしても字が読めます。
今この迷路にさきほどの砂粒が入ってきた状態が良性発作性頭位めまいの病態です。
迷路は3次元の形に半円(半器官)が組み合っていますが、頭を左右(垂直軸)に動かすときは水平半器官、頭を肩のほう(前後軸)に倒すときは前半器官、頭をこっくりこっくりと前後(水平軸)に動かすときは後半器官が作動します。
眼球は3つの軸の周りに動きますので、頭をどの軸に動かした時に、眼球がその軸に合った動きをするのかで、耳石がどの半器官にあるかが分かります。

治療として、耳石を元の位置にもどす、つまり特定された半器官から前庭のほうに返す方法が行われています。
これを置換法といい色々な方法が発表されていますが、実施にあたっては専門家に任せるのがよいとおもいます。

当院でも診断と治療を行っています。

自験例からいえば典型的に即座に改善する例もありますが、必ずしも多くありません。
しかし一度は試みてみるべき方法と考えます。
この病気の場合、めまいがするからといって大事に寝ているというのは治癒を長引かせます。
早期離床し日常生活の動作を取り戻すことが大切です。
2週間ほどすると改善する症例が多くみられます。一方、長期にわたり症状が長引く例がたまにみられます。
めまいに対するリハビリ療法が行われ成果がみられるとの発表がなされています。

治療の方法の一つとして選択肢の一つでしょう。
ちなみにこの疾患にかぎれば、めまい薬を長期にわたって服用を続けることは避けたいものです。
頭の位置によってめまいが起こるということは他の疾患でもみられますので、この疾患だけで説明するのは危険です。

専門の医療機関を受診して確かな診断をうけてください。